【法務(ー1日目)】クリスマスだって勉強するでしょ(秘密保持契約の実務(第2版) ―作成・交渉から営業秘密/限定提供データの最新論点まで )(3/3)。
森本先生らが執筆された「秘密保持契約の実務(第2版) ―作成・交渉から営業秘密/限定提供データの最新論点まで」を読むことにした。
秘密保持契約は、
法務部からはその重要性自体問われる場面にも遭遇するが、主として、知財担当者からは、重要性こそ、主張されており、取扱自体が会社によって異なる契約書といえるのかもしれない。ただ、これから入社初日を迎えようとする零にとっては、事業部との最初の接点となる契約書である。しっかりと”いいところ”を見せたいと思っていた。
書籍の目次を見てみると次のようなことが書かれていた。
第1章 秘密保持契約の作成・交渉(P1)
第2章 秘密保持契約の条項(P17)
第3章 従業員との間の秘密保持契約に関する留意点(P101)
第4章 秘密保持契約を検討する際に理解しておくべき、営業秘密・限定提供データ漏えいをめぐる民事裁判の争点(P123)
第5章 営業秘密漏えいに対する刑事的制裁(P197)
第6章 限定提供データの保護(P237)
巻末付録
付録1 契約の形式面の調整
付録2 秘密保持契約書サンプル(和文)
付録3 秘密保持契約書サンプル(英文)
書籍で行われた説明を元にした契約書のサンプルが入っているのは嬉しいし、外資系企業に勤めようとする零にとって英文の契約書があることも嬉しかった。何より、交渉を意識して記載されたこの書籍は、さながらOJTのように、法務の現場にいるような感覚になることができる。また、法務体制の確立を職責としている零にとっては、訴訟になった場合の対応や、情報の管理についてまで言及されていることが、ガバナンスの勉強にもなる点でも心強かった。この本の素晴らしさについては、ビジネス法務2023年2月号でも触れられているようだ。
秘密保持契約の条文の表題として挙げられているのは下記であった。
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頭書(内容・当事者・目的)
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秘密情報の定義
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秘密保持義務とその例外
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目的外使用の禁止
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秘密情報の複製
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秘密情報の破棄または返還(破棄/返還の選択・時期・証明書の要否)
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損害賠償(賠償の範囲・免責規定・違約金・損害賠償額の予定)
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差止め
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有効期間
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情報管理態勢整備義務
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情報の正確性の不保証
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知的財産権の付与やライセンスに該当しない旨の規定
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競合禁止義務
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株式譲渡契約における秘密保持義務特有の留意点
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誠実交渉義務
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準拠法
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紛争処理条項
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独立契約者
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費用
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通知
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完全合意
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権利の不放棄
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修正または変更
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分離可能性
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譲渡禁止
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他の言語との抵触
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言語
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正本
一般条項については、付録に英文契約書の雛形が掲載されているからか、必ずしも、大半の秘密保持契約には載っていない条項までもが説明されていた。一方で、メーカーと秘密契約書を締結する場合によくみるリバース・エンジニアリング禁止に関わる条項は、なぜか掲載されていなかった。零は、少しだけ、インターネットサーフィンをして、リバース・エンジニアリングを含めた条項のある秘密保持契約を参照してみた。
第6条(知的財産権等の取扱)
1 受領者は、法令により明示に認められている場合を除き、甲が開示した秘密情報に関して、リバースエンジニアリング、逆コンパイル又は逆アセンブルを行ってはならないものとする。
2 甲が受領者に秘密情報を開示する場合において、当事者間で書面により契約を締結するのでない限り、甲は、甲の秘密情報にかかる特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、営業秘密及びその他の知的財産権(以上の権利を併せて以下「知的財産権」という。)に関する出願、登録、実施等の権利を、明示であると黙示であるとを問わず、受領者に対して許諾するものではなく、甲は、これら甲の秘密情報にかかる知的財産権に関する権利を留保するものとする。
3 受領者が秘密情報に基づいて発明、考案、意匠、著作物又はその他の創作等をなしたときは、受領者は、直ちに甲に対し通知するものとし、知的財産権等の権利の帰属、取扱い等について甲乙別途協議の上決定する。
(特許庁)
第 5 条 受領者は、秘密情報について、開示者の事前の書面等による承諾なく、秘密情報の組成または構造の分析、解析その他類似の行為を行ってはならない。
(秘密保持契約書 - triBlog 株式会社トリアナのブログ)
第13条(リバースエンジニアリング等の禁止)
情報受領者は、秘密情報及び秘密情報が化体された商材等の成果物について、分解、分析、解析、リバースエンジニアリング等を行ってはならないものとする。
第*条(複製等)
1 受領当事者は、本件目的の遂行に必要な範囲を超えて、秘密情報の全部又は一部を複製しないものとする。また、複製された秘密情報は、秘密情報として取り扱うものとする。
2 受領当事者は、秘密情報を改変、分解、解析又はその他リバースエンジニアリングをしてはならない。
久しぶりに触れた秘密保持契約ではあったけど、
零は、秘密保持契約もまた、契約書がリーガルリスクをコントロールするものとして機能するためには、契約書が、どのような取引過程を通じて、どのような結着点を迎えることが予定されているのか、破談に終わった場合に、どのような処理を想定しているのか、その処理を正当化するための社内規程はあるのかなど、多岐にわたる知識が必要であることを思い知った。
クリスマスだって勉強でしょと思った今日は零にとって正解だった。