【法務3日目】司法試験との出会い

 

 

翌々日、零は令和元年の憲法の問題について回答を作り、就業時間前の朝8時に。顧問弁護士である石井先生に、答案を送っていた。

 

 

 

午前11時に回ったあたりだろうか、

石井先生から1通のメールが届いていた。メール本文には何のコメントも記載されていない。零は、メールに添付されたPDFファイルを開いてみた。

 

 

PDFに赤い文字でおびただしい数のコメントがされていた。

零の答案の文字サイズが20であったのに対し、石井先生のコメントは、文字サイズ8だった。その内容をみても、「制度的保障を理解していないことが表現からみてとれる」、「法的三段論法が遵守されていない」、「規範とあてはめが一致していない」という基本的なものばかりであった。自分なりには書けたつもりになっていた答案について、答案の中核となる政教分離の法的性格さえ不理解を指摘され、規範とあてはめの不整合まで指摘されるとさすがに気が滅入る。「20行目の意味がいまいち分からない」というコメントさえ見つけてしまった。

 

 

零は悔しかったが、どのようなものであれ、お礼を言わなくてはいけないと考えた。

 

おそるおそる石井先生に電話をかける。

 

 

プルルルル…。

 

石井「はい、石井です。」

 

 

零「先生…、零です。先日は、ご多用の中、私のためにお時間をいただきまして、有難うございます。先生から頂いたコメントから学ばせていただき…」

 

 

石井「答案見させてもらったけど、君には「憲法の解釈の誤り」を指摘することは当分先そうだな。ハハハ。しかし、君も、法律で飯を食っているというのであれば、法律の基礎くらい、司法試験を通じて、勉強してみてはどうかね。「受けちゃえ、司法試験」という時代なんだろ。ハハハ。では、これからクライアントとミーティングがあるから、また今度。商標権侵害のレターは、明後日には遅れるから確認をしてくれたまえ。それではまた何かあったら言ってくれ